MATH: WHAT MAY CHANGE

算数・数学で、
何が変わり得るのか。

文部科学省の算数・数学ワーキンググループ「取りまとめ(案)」(2026年8月)には、方向論だけでなく、小・中・高を貫く骨組みの変更、高校の新しい学習内容や科目再編の案まで出ています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。

HOW TO READ

色の意味

現行・継続

すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。

取りまとめ案で具体化

ワーキンググループの案に、科目・内容・扱い方の例まで示されています。まだ決定ではありません。

未確定

科目名、単位数、各学年の細かな内容、開始時期は今後の専門的検討・正式手続で決まります。

WHEN

いつから変わるのか

算数・数学だけの時期が決まっているわけではなく、学習指導要領全体のスケジュールに乗ります。文部科学省が示した見通しでは、小学校算数は2030年度、中学校数学は2031年度から全面実施、高校数学は2032年度の入学生から学年進行で切り替わります。それまでは現行の内容で学びます。

学校種改訂(告示)予定周知・先行実施全面実施
幼稚園等2026年度末2027年度 周知2028年度(令和10年度)から全面実施
小学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施2030年度(令和12年度)から全面実施
中学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施2031年度(令和13年度)から全面実施
高等学校2027年度末2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施

出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。

FRAMEWORK

骨組みが変わり得ること(小・中・高に共通)

個々の単元より先に、算数・数学という教科の組み立て方そのものを小・中・高で揃える案が出ています。単元名や学年配当の前提になるため、最初に押さえておく部分です。

学習内容を6つの「分野」に統一

変わり得ること

小学校算数から高校「数学Ⅰ」までの学習内容を、共通の6つの分野で整理する案です。小・中・高で内容のつながりを見えやすくするのが狙いです。

現行
小学校算数・中学校数学は「領域」(数と計算、図形、変化と関係、データの活用 など)、高校数学は「項目」という別々の区分で内容を示しています。
取りまとめ案
「数と式」「図形」「変化と関係」「データと確からしさ」「論証」「社会を読み解く数学」の6分野に統一。各分野をさらに1〜2の「区分」に分け、区分ごと・学校種ごとに「統合的な理解」「総合的な発揮」という高次の資質・能力と学習内容を表形式で示す案です。
未確定
各分野・区分にどの単元がどの学年で入るか、表の具体的な記述は「文部科学省で行政的に検討」とされています。

目標と「見方・考え方」を小・中・高で統一

変わり得ること

教科の目標を小・中・高で統一し、見方・考え方に「事象や言説を数理の視点から捉え、論理的、統合的・発展的、批判的に考察する」ことを加える案です。

現行
算数科・数学科それぞれに目標があり、「数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える資質・能力を育成する」と定めています。
取りまとめ案
生成AIの時代に「AIの出力の妥当性を検証する」「言説を批判的に読む」力が必要だとして、メディアリテラシーの観点を見方・考え方に組み込む方向です。教科名の統一(算数と数学)は意見の隔たりが大きく継続検討。算数の公的な英語表記を Arithmetic から Mathematics に改めることは先行して実施するとされています。
未確定
目標の最終的な文言、教科名をどうするかは決まっていません。
SPECIFIC CHANGES IN THE DRAFT

変わり得ることを、学校種ごとに具体的に

強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。

小学校|割合・比・分数の学び方・順序と、「説明する」活動

変わり得ること

つまずきが多い「割合・比・分数」は、内容そのものや学ぶ順番を見直して確実な定着を図る案です。あわせて、中学・高校の証明につながる「論理的に説明する活動」を各内容で充実させます。

現行
割合に関する内容を充実し、日常・社会の事象を数学的に捉える学習を重視しています。小学校学習指導要領・算数 第1目標(PDF p.66)
取りまとめ案
割合・比・分数について、学習内容や排列(学ぶ順番)の改善を検討。各内容で論理的に説明する活動を充実。社会・職業との関係は独立した内容としては設けず、各単元の指導の中で扱います。帯分数など「足掛かりとして学習する事項」は、発達段階を踏まえて真に必要かを改訂作業の中で点検するとしています。
未確定
どの学年へ何を移すか、扱う量を増減するか、点検の結果どの事項が残るかは未公表です。

中学校|「数学ガイダンス」と証明の充実

変わり得ること

中学に入る段階で、小学校からのつながり・数学と社会や職業の関係を学ぶ「数学ガイダンス」を新たに置く案です。推論・論証(証明)も厚くする方向です。

現行
中学校で証明を扱い、数学的に考察し表現する力を育てます。中学校学習指導要領・数学 第1目標(PDF p.66)
現行の目標
数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を育成すると定めています。
取りまとめ案
「数学ガイダンス」を中学校に新設。内容のイメージとして、小学校算数と中学校数学のつながり(文字で一般的に説明する、証明で解き明かす、表・式・グラフで予測する、分布を捉える)、身の回りの数学、職業と数学の関係、九九表の規則性を根拠をもって説明する活動などが挙げられています。総授業時数は増やさないことが前提です。推論・論証(証明)に関係する学習を充実。
未確定
ガイダンスの時間数、扱う教材、証明の単元構成は「具体的内容については別途専門的に検討」とされています。

高校|数学Ⅰに「数学ガイダンス」と「社会を読み解く数学」

変わり得ること

数学Ⅰだけを履修して卒業する生徒にも、確率・統計・行列・数列を社会の場面と結び付けて学べるようにする、かなり具体的な新設案です。数学Ⅰの単位数は増える見込みです。

現行
数学Ⅰ(3単位・必履修)は「数と式」「図形と計量」「二次関数」「データの分析」で構成されています。高等学校学習指導要領・数学I 第1目標(PDF p.93)
取りまとめ案
必履修の数学Ⅰに「数学ガイダンス」(数学の全体像、数の広がり、微分・積分の素地、仕事で使われる数学)と「社会を読み解く数学」を新設。後者は「場合の数と確率」「統計的な推測」「行列」「数列」の基礎的素養を、数理モデル、等比数列と漸化式、確率と期待値、数学的表現としてのベクトルなど実社会の場面から学ぶ案です。数学Ⅰ→Ⅱ→Ⅲの履修順序と、微分・積分を段階的に深める構成は維持。
未確定
数学Ⅰの総単位数、各内容の配分、実施年度は決まっていません。新科目で相当する内容を選択履修した場合に数学Ⅰを減単できる特例も案の段階です。

高校|数学A・B・Cを一つの新科目へ再編

変わり得ること

現行の数学A・B・Cを一つの新科目に統合し、進路・関心に合わせて学習内容を選べる構造にする案です。重要度の高い内容がA・B・Cに散らばり、文系志望者に履修されていない実態が理由に挙げられています。

現行
数学A・B・Cは別々の選択科目です。履修の仕方が固定的という課題が示されています。数学A(PDF p.100)数学B(PDF p.101)数学C(PDF p.103)
取りまとめ案
3科目を1つの新科目に統合し、学習内容を「場合の数と確率」「統計的な推測」「行列」「数列」「幾何ベクトル」「複素数と複素数平面」の6つに整理。AI・データサイエンスの基盤として線型代数(行列)、解析(微分・積分)、確率、統計を重視します。単独校で開設が難しい場合は、複数校が分担して遠隔授業で相互に履修する工夫も挙げられています。
未確定
新科目の名称、必ず学ぶ項目、単位数、大学入試との関係は未確定です。資料中の「数学E」「数学S」「数理活用」は名称候補にとどまります。

高校|学習内容の総量を増やさないための精選

変わり得ること

数学Ⅰが厚くなる分、数学Ⅱを中心に選択科目の内容を他科目へ移したり精選したりして、科目間の単位数をならす案です。

現行
数学Ⅱは4単位で「いろいろな式」「図形と方程式」「指数関数・対数関数」「三角関数」「微分・積分の考え」を扱います。
取りまとめ案
「統合的な理解」「総合的な発揮」に不可欠でない内容は精選する方針。検討例として数学Ⅱ「いろいろな式」、数学Ⅲ「微分法」「積分法」、数学C「平面上の曲線と複素数平面」の見直しが挙がっています。教科書の内容に「必ず扱う」「必要に応じて扱う」の濃淡を付けることも検討。
未確定
具体的にどの項目を削るか・移すかは示されていません。
MAPPING

現行の数学A・B・Cの内容は、どこへ行くのか

取りまとめ案の補足資料には、現行のA・B・Cの各項目が新科目のどの内容に移るか、あるいは数学Ⅰや他の科目へ移るかの対応が示されています。いま数学A・B・Cを教えている・学んでいる人が、変化の見当を付けるための表です。

現行科目現行の項目・内容取りまとめ案での行き先
数学A図形の性質(三角形・円の性質、作図、空間図形)共通教科「理数科」解説の事例へ
場合の数と確率新科目「場合の数と確率」へ
数学と人間の活動(数量や図形と人間の活動、遊びの中の数学)数学Ⅰ「数学ガイダンス」へ、理数科解説の事例へ
数学B数列(等差数列と等比数列、いろいろな数列と漸化式、数学的帰納法)新科目「数列」へ
統計的な推測(確率変数と確率分布、二項分布と正規分布、母集団と標本、統計的な推測の考え)新科目「統計的な推測」へ
数学と社会生活(数理的な問題解決)数学Ⅰ「社会を読み解く数学」へ、理数科解説の事例へ
数学C数学的な表現の工夫(図、表、統計グラフ)数学Ⅰ「データの分析」へ、理数科解説の事例へ
数学的な表現の工夫(離散グラフ、行列)新科目「行列」へ(数ベクトルを含む)
ベクトル(ベクトルとその演算、内積、空間座標、空間におけるベクトル)新科目「幾何ベクトル」へ
平面上の曲線と複素数平面平面上の曲線は数学Ⅲ「微分法」「積分法」へ、複素数平面は新科目「複素数と複素数平面」へ

出典:算数・数学ワーキンググループ取りまとめ(案)補足イメージ⑤「現行 数学A・B・Cと新科目の関係」。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。

STUDY PATTERNS (DRAFT)

進路別の履修イメージ(試案)

取りまとめ案は、新科目ができた後の履修パターンのイメージを3つ示しています。「文系でも確率・統計・行列・数列の4項目は履修する」という方向が読み取れます。あくまで試案で、各学校のカリキュラムを決めるものではありません。

職業系専門学科・大学進学を希望しない生徒が多いコース

数学Ⅰ新科目から1項目以上

卒業後の生活でも使う「場合の数と確率」を履修し、目指す業界に応じて「統計的な推測」などを加えるイメージ。

いわゆる文系の大学・学部への進学希望者が多いコース

数学Ⅰ数学Ⅱ新科目から選択

経済学部や文学部でも数理的素養は必須として、「場合の数と確率」「統計的な推測」「行列」「数列」の4項目は履修するイメージ。

いわゆる理系の大学・学部への進学希望者が多いコース

数学Ⅰ数学Ⅱ数学Ⅲ新科目

数学Ⅲまで履修したうえで、新科目の内容(行列、幾何ベクトル、複素数平面など)を進路に合わせて履修するイメージ。

出典:同 補足イメージ⑥「高等学校・数学科の履修イメージ(試案)」。科目の内容は、数学Ⅰ=数学ガイダンス・数と式・図形と計量・二次関数・データの分析・社会を読み解く数学、数学Ⅱ=いろいろな式・図形と方程式・指数関数・対数関数・三角関数・微分・積分の考え、数学Ⅲ=極限・微分法・積分法(いずれも案)。

LEARNING SUPPORT

学び直し・つまずき対応の仕組みも論点になっている

算数・数学は積み上げの教科で、一つの単元のつまずきが雪だるま式に広がる構造があると資料は指摘しています。内容だけでなく、指導と教育課程の仕組みの面でも検討が進んでいます。

学び直しの時間を確保する仕組み

検討中
義務教育段階の「調整授業時数制度」で生まれる裁量的な時間を、下学年の未習得事項を学び直すプログラムや、学習方略・メタ認知の指導、個別指導に使う例が挙げられています。学年区分を超えた指導時期の前倒し・後ろ倒しを認め、まとまった時間で定着に課題のある単元を学び直すことも想定されています。
未確定
制度の詳細は総則・評価特別部会で検討中です。安易な時数調整で定着に影響が出ないよう留意するとされています。

既習事項の習得状況(レディネス)の確認と、学習科学の知見

検討中
ある単元を理解するための既習事項の習得状況を確認するアセスメントが十分でないとして、その充実を求めています。指導には分散学習・検索練習・自己説明など認知心理学・学習科学の知見を踏まえること、「間違っても良い」「分からないと言える」心理的安全性を確保することが有効とされています。

高校|数学Ⅰの履修免除(外部試験の活用)

検討中
社会的信頼性が確立した外部試験で、数学Ⅰ相当より上位の級(数学Ⅱ・B相当など)に合格している生徒について、必履修の数学Ⅰの履修を免除し、発展的な学校設定科目や大学の授業などに振り替えられる仕組みが検討されています。才能の伸長支援が目的で、入試対策の早修への濫用は不適切とされています。
未確定
対象となる試験と級、振替先の範囲は解説で定めるとされ、まだ示されていません。
STATUS

「方向性だけ」の段階ではない。ただし確定でもない。

2026年8月に掲載された算数・数学ワーキンググループの取りまとめ(案)には、上記のように骨組み・内容・科目構成の案が明記されています。一方、資料自体に「具体的内容については別途専門的に検討」「文部科学省で行政的に検討」とあるため、学年別の全単元・時数・正式名称を断定することはできません。同時に、高等学校の共通教科「理数科」の取りまとめ(案)も公開されています。

WHAT TO DO NOW

いま学んでいる人・教えている人は、何を押さえればよいか

保護者・小中学生

在学中の大半は現行の内容です。次期案で「確実な定着」が求められている割合・比・分数、文字式、証明は、方向が変わっても土台であることは変わりません。先取りより、いまの単元のつまずきを残さないことが有効です。

塾・教室の先生

小・中・高のつながり(6分野)と「説明する活動」が重視される方向です。単元を教えるときに前後の学年との接続を言葉にしておくと、改訂後の教材にも移しやすくなります。A・B・Cの行き先表は、高校生の科目選択の相談材料になります。

高校生

いま在学中の人は現行の数学Ⅰ〜Ⅲ・A・B・Cのまま卒業します。新科目や履修免除は、2032年度以降の入学生からです。確率・統計・行列・数列が文系でも重視される方向は、進路選択の参考になります。

CURRENT LEARNING

現行の算数・数学を確認する

確定しているのは現行学習指導要領です。学年・単元のつながりはこちらから確認できます。

小学校小学校算数で学ぶこと 中学校中学校数学で学ぶこと 高校高校で学ぶこと 他のテーマ教科・論点別の比較一覧

現行の範囲で算数・数学の教材をつくる

学年・単元・つまずいていることを入力すると、現行の学習指導要領を参照した解説や練習問題を作れます。

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