総合は「質の高い探究」、特活は「民主主義の担い手を育む基盤」、道徳はその「実践の場」の土台
総合は「自己の興味・関心に関わる課題」、特別活動は「学級・学校や自己の生活に関わる課題」を主な対象とし、道徳教育にとって総合と特活は「実践の場」だと整理する案です。学校行事とキャリア教育を、総合と特活が連携する場面として位置付けます。
教科ではない3つの領域は、次期改訂で役割がはっきり書き直されようとしています。文部科学省の生活、総合ワーキンググループと特別活動ワーキンググループの「取りまとめ(案)」(2026年8月)には、小中の総合の名称変更、探究の形態の整理、「情報の領域」の設計、学校行事を総合で代替できる範囲、生徒会の学校運営への意見表明、生活科の意義の再定義まで書かれています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。
すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。
ワーキンググループの案に、名称・領域・活動の例まで示されています。まだ決定ではありません。名称や区分はすべて案です。
各学校が定める目標・内容の書き方、時数、教材、開始時期は今後の告示・解説と条件整備で決まります。
学習指導要領全体のスケジュールでは、小学校は2030年度、中学校は2031年度から全面実施、高校は2032年度の入学生から学年進行です。小学校の総合に置かれる「情報の領域」については、情報・技術ワーキンググループが2028年度から段階的に先行実施する経過措置を検討するとしており、総合の中では最も早く動く可能性があります。
| 学校種 | 改訂(告示)予定 | 周知・先行実施 | 全面実施 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園等 | 2026年度末 | 2027年度 周知 | 2028年度(令和10年度)から全面実施 |
| 小学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施 | 2030年度(令和12年度)から全面実施 |
| 中学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施 | 2031年度(令和13年度)から全面実施 |
| 高等学校 | 2027年度末 | 2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施 | 2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施 |
出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。
「道徳」「総合」「特別活動」の三者の境目が曖昧で、それぞれの特質を踏まえた活動が十分に行われていない、という課題認識から、役割分担を書き直す案です。
総合は「自己の興味・関心に関わる課題」、特別活動は「学級・学校や自己の生活に関わる課題」を主な対象とし、道徳教育にとって総合と特活は「実践の場」だと整理する案です。学校行事とキャリア教育を、総合と特活が連携する場面として位置付けます。
探究を「実社会・実生活との関わりの中で見いだす自己の興味・関心や問題意識に基づき課題を設定し、必要な知識や方略を活用し、試行錯誤しながら、課題解決を通じた新たな価値の創造を繰り返していく学習のプロセス」と定義し直す案です。
強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。
小学校・中学校の「総合的な学習の時間」を高校と同じ「総合的な探究の時間」に改め、小中高で一貫させる案です。探究の形態を、教師が起点の「テーマ探究」と個人が起点の「マイ探究」、課題の性質による「研究系」「行動系」「創作系」として示し、各学校段階の最終学年などに「節目としての探究」を置くことが望ましいとします。
小学校の総合を、従来の探究に当たる「探究の領域」と、情報活用能力を育てる「情報の領域」の2領域で構成する案です。情報の領域は探究の領域と各教科を「基盤として支える」位置付けで、情報技術の学習そのものが総合の目的だと誤解されないよう注意書きが付いています。
「規律か自由か」「集団か個人か」の二項対立を超えて、過度な同調圧力から脱却し、「多様性を個人と社会の力に変える」集団性へ意義を更新する案です。三つの視点のうち「社会参画」を「社会創造」に再整理し、包摂性・創造性・当事者性の3側面で特質を示します。
児童会・生徒会活動の内容に「学校のきまりをはじめとする生活上の課題の解決に向けて児童生徒が提案を行い、教師等との話合いを通して学校運営に関わる」という記載を設ける案です。こども基本法の「意見表明・社会参画の機会の確保」を踏まえています。
生活科の本質的意義を「身体性」「対象と自分との関わり」「他者と自分との関わり」「自己認識」の4つで整理し、目標の柱書にある「具体的な活動や体験」を「身体性を伴う体験と多様な表現活動」に改める案です。
現行でも整理はありましたが、解説の記載が曖昧で、総合の趣旨から遠い活動に総合の時数が充てられている例があるとして、線引きを明確にする案です。
| 学校行事の種類 | 例 | 総合による代替(取りまとめ案) |
|---|---|---|
| 儀式的行事 | 入学式、卒業式、始業式・終業式 | 原則、代替しない |
| 文化的行事 | 文化祭、学習発表会、音楽鑑賞会 | 準備・練習は原則不可。探究の成果発表として学習発表会の準備を行う部分は可 |
| 健康安全・体育的行事 | 運動会・体育祭、避難訓練、交通安全指導 | 準備・練習は原則不可。探究と関連付けて行事を実施する場合(地域の安全をテーマにした探究の一環としての交通安全教室など)は可 |
| 旅行(遠足)・集団宿泊的行事 | 遠足、修学旅行、野外活動、集団宿泊活動 | 総合の目標や学習過程を踏まえた探究として成立する部分のみ可(例:事前・事後学習の一部) |
| 勤労生産・奉仕的行事 | ボランティア活動、職場体験、就業体験 | 同上。探究として成立する部分のみ可 |
出典:生活、総合WG取りまとめ(案)補足イメージ50「学校行事と総合との関係の一層の明確化について」。代替は「できる」であって「しなければならない」ではなく、追加書類は求めないが年間指導計画に位置付けることが前提とされています。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。
取りまとめ案は、探究を「型にはめる」ためではなく、テーマの偏りから脱却し多様な探究を認めるために、次の形態を参考資料で示すとしています。
学年・学級で共通のテーマを設定し、特定のテーマを掘り下げて興味・関心を広げる。共通の体験や協働を重視。例:特定のテーマで地域課題を見いだし学級で提言をまとめる。
一人一人の興味・関心を深掘りする。例:興味・関心に基づき選んだゼミの中で活動する、個人の課題について研究や作品制作を行う。高校で自律的にできることを目指す。
問いの設定、情報収集(先行研究)、仮説の生成と検証、まとめ・表現。例:日常生活で見つけた不思議の解明。成果は論文・レポートなど。
地域の課題解決など、問題解決型・プロジェクト型の探究。成果はプレゼン・実演など。
問いや課題の設定、素材収集とアイデア創出、設計・試作、批評・改善。例:課題解決に向けた作品づくり。生成AI時代に「消費者」でなく「創作者」の経験を積む意義から新たに位置付け。
出典:同 補足イメージ6・7。「考えるための技法」も、現行の10個の羅列から「広げる(自由に発想する、組み合わせる)」「整理する(比較、分類)」「深める(理由付ける、吟味する、見通す)」など発散と収束で分類し直す案です。
総合は内容を各学校が定める領域です。取りまとめ案は「質の高い探究を絵に描いた餅にしない」として、計画の簡素化と連携の足場づくりも扱っています。
2026年8月に掲載された各取りまとめ(案)には、上記のように名称、領域構成、探究の形態、行事の代替ルール、生徒会の役割の案が明記されています。一方、多くは「参考資料等の形で示す」「解説で記載する」とされ、総合は内容を各学校が定める領域であることから、単元レベルの変更を断定することはできません。
「自分の興味から問いを立て、調べて、形にして、人に見せる」という探究の流れは、方向が変わっても土台のままです。家庭でできるのは、子どもの「なぜ?」「やってみたい」を身体を使う体験につなげること。生活科の案が重視する直接体験は、家庭の役割が大きい部分です。
「マイ探究」と「創作系」が明示される方向は、教室での自由研究やプログラミング作品づくりと相性がよい部分です。研究系・行動系・創作系の違いを意識して、成果を論文・プレゼン・作品のどれで外化するかを子どもに選ばせる練習は今からできます。生徒会の意見表明が位置付けられる方向は、合意形成の練習の題材になります。
学校行事を総合で代替できる範囲の線引きと、全体計画・評価の簡素化は、告示前でも年間指導計画の見直しの参考にできます。「情報の領域」は2028年度からの先行実施が検討されているので、他領域より早く準備が要る可能性があります。