OVERALL: WHAT MAY CHANGE

教科の前に、
教育課程全体の変化を見る。

次期学習指導要領の検討では、教科ごとの内容だけでなく、学習指導要領そのものの書き方、学校が時間割を組む自由度、評価のやり方が論点になっています。9つの教科等ワーキンググループの取りまとめ案を読むと、どの教科にも共通して現れる6つの変更があります。ここでは、その全体像を現行と並べて確認します。まだ正式な学習指導要領ではありません。

HOW TO READ

色の意味

現行・継続

すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。

検討中

論点整理、審議まとめ(素案)、各ワーキンググループの取りまとめ案に示された方向性です。まだ決定ではありません。

未確定

制度の詳細、時数や単位数、開始時期は今後の答申と告示で決まります。

WHEN

いつから変わるのか

「2030年改訂」と呼ばれることがありますが、改訂(告示)は幼稚園・小学校・中学校が2026年度末、高等学校が2027年度末の予定です。2030年度は小学校で全面実施になる年度にあたります。学校種ごとに時期がずれ、高校は入学生から学年進行で切り替わります。

学校種改訂(告示)予定周知・先行実施全面実施
幼稚園等2026年度末2027年度 周知2028年度(令和10年度)から全面実施
小学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施2030年度(令和12年度)から全面実施
中学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施2031年度(令和13年度)から全面実施
高等学校2027年度末2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施

出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。

SIX COMMON CHANGES

全教科の取りまとめ案に共通して現れる、6つの変化

教科ごとの比較ページを読む前に、この6つを押さえておくと、どの教科の案も同じ設計思想から出ていることが見えてきます。9つのワーキンググループの取りまとめ案を読み比べて整理したものです。

1. 学習指導要領を「表形式」にし、高次の資質・能力を示す

変わり得ること

内容のまとまりごとに「統合的な理解」(個別の知識が結び付いて概念として分かった状態)と「総合的な発揮」(複雑な課題に対して力を組み合わせて使える状態)を示し、教師が単元を構想しやすくする案です。

現行
知識及び技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の3つの柱で目標と内容を整理しています。個別の指導事項が並ぶ形で、最終的にどんな理解に到達させたいかが見えにくいと各ワーキンググループが指摘しています。
検討中
すべての教科で「高次の資質・能力」を新設し、内容を表形式で構造化します。並べ方は教科の性格で分かれ、知識と思考を一体で育てる教科(算数数学・理科・社会・家庭・体育)は「並列パターン」、知識が全体として思考の深まりを支える教科(国語・外国語・芸術)は「並行パターン」を採ります。用語の暗記に偏った授業から、概念の理解に向かう授業への転換を促すのが狙いです。
未確定
具体的な記述は「告示までに文部科学省で引き続き検討」とされています。

2. 目標と「見方・考え方」を小・中・高で統一する

変わり得ること

学校種ごとに文言が違っていた目標を統一し、見方・考え方は「卒業後の人生でも働くもの」として書き直す案です。

現行
教科の目標は学校種ごとに文言が少しずつ異なり、見方・考え方も小学校と中高で書き分けられている教科があります(理科など)。学校種をまたぐ接続が意識されにくいと指摘されています。
検討中
算数・数学、理科、国語、社会、外国語、体育、芸術、家庭で、目標の柱書や見方・考え方を小中高で統一する方向です。多くの教科で、見方・考え方の対象が広がるのも共通します。理科は「自然の事物・現象」から「自然や社会の事象・言説」へ、社会は「社会的事象」から「社会的事象やその言説」へ。生成AIとSNSで情報が溢れる状況を踏まえ、批判的に考える視点がどの教科にも入ります。
未確定
最終的な文言は告示で確定します。

3. 「AIに代替されない学び」として教科の意義を定義し直す

変わり得ること

どの教科も「AIがこれをやってくれる時代に、なぜ学校で学ぶのか」を問い直し、その答えを目標や内容に反映する案です。

現行
生成AIの急速な普及は前回改訂時に想定されていませんでした。
検討中
外国語は「翻訳ツールを超えた、人間同士のリアルなコミュニケーション」、国語は「人間ならではの言語能力」、算数・数学は「AIの出力の妥当性を検証する力」、理科は「デマやフェイクを客観的・批判的に考察する力」、体育は「身体を使いこなして能動的に人生を舵取りする力」、生活科は「AIで代替できない実感を伴う知」、総合は「AIが最適解を提供し続ける時代に自ら問いを立てる力」、道徳は「AI時代の自らの人生の舵取り」。表現は違いますが、向いている方向は同じです。
未確定
AIの授業での扱いは、告示を待たずガイドライン等で示すとする教科もあります。

4. 内容を精選し、授業に「余白」をつくる

変わり得ること

全体として学習内容を増やさないことを前提に、重複する内容を整理し、教科書の用語や例示を減らす案です。新しい内容を足す場合も、総量が増えないようにします。

現行
前回改訂で内容が増えた教科があり、教科書が網羅的で分量が多いこと、入試の影響で用語の暗記量が重視される風潮が課題として挙げられています。
検討中
社会は教科書の「用語等の精選方針(仮称)」を2027年秋までに示し、入試の改善も併せて検討。外国語は国が基盤語彙リストを作って語彙数を見直し、中学校の文法事項を焦点化。理科は学年間・学校種間で重複の大きい内容を整理。算数・数学は数学Ⅰが厚くなる分、数学Ⅱを中心に精選。体育は具体的な運動種目の示し方を柔軟にします。生み出した時間は、学び直しや探究に充てる想定です。
未確定
どの内容を削るかの具体は、ほとんどの教科で示されていません。

5. 教育課程を柔軟にする(調整授業時数、学年区分、単位)

変わり得ること

義務教育では「調整授業時数制度」で学校の裁量の時間を生み、高校では単位を細かく刻んで科目を組み替えられるようにする案です。学年区分も「○学年相当」と示し、学校の判断で前倒し・後ろ倒しできるようにします。

現行
標準授業時数と学年ごとの指導内容が定められ、学年を超えた指導や科目の組み替えは限定的です。
検討中
調整授業時数で生まれる「裁量的な時間」は、学習枠(学び直し、個人探究の深掘り、企業等と連携した取組)と研究・研修等枠の2類型。小中とも2028年度から先行実施の予定です。高校は必履修科目を外部試験で免除する仕組みが外国語(CEFR B2相当以上)と数学で検討され、免除した時間は発展的な学習や学校外学修に振り替えられます。
未確定
制度の詳細は総則・評価特別部会で検討中です。教科の系統性が強い算数・数学や理科では、安易な時数調整で定着に影響が出ないよう留意するとされています。

6. 評価の手間を減らし、過程を見る評価へ

変わり得ること

各学校が作っていた評価規準を国が例示して作成を不要にし、単元ごとに3観点すべてを記録する運用を改める案です。

現行
各学校が「内容のまとまりごとの評価規準」「単元の目標」「単元の評価規準」を作成します。短い単元で3観点すべてを記録に残そうとして総括的評価に偏る、過度な評価材料集めにつながる、といった課題が複数の教科で指摘されています。
検討中
国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示し、各学校での作成を不要にする方向。単元の目標がそのまま評価規準になるようにします。芸術は複数の題材でまとめて総括的評価を行うことも可能に、総合は評価の視点を10要素程度から5要素程度に減らし、「学びに向かう力」は「見取る姿(仮称)」として改訂後に速やかに検討するとされています。
未確定
評価規準例の内容と、「見取る姿」の具体は今後示されます。
CURRENT / UNDER REVIEW

教育課程全体の論点

「検討中」の行は、文部科学省の審議資料で示された検討方向です。正式な変更内容ではありません。

資質・能力の整理

現行
「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で、教育課程全体と各教科の目標を整理しています。
検討中
資質・能力の深まりと一体的な育成を、より分かりやすく構造化・可視化する方向が議論されています。

深い学びと使いやすさ

現行
主体的・対話的で深い学びの実現に向け、各教科等の特質に応じた授業改善を進めることを示しています。
検討中
中核的な概念等を活用した構造化、表形式化、デジタル化により、分かりやすく使いやすい指導要領にする方向が扱われています。

多様な子どもと柔軟な教育課程

現行
子どもの発達や特性、学校・地域の実態を踏まえ、各学校が教育課程を編成することを示しています。
検討中
調整授業時数制度、裁量的な時間、個別の児童生徒に係る教育課程など、柔軟化の仕組みが検討されています。

情報活用能力・評価

現行
情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力の一つに位置付けられ、評価は資質・能力の育成と指導改善につなげます。
検討中
情報活用能力の抜本的向上と、豊かな学びにつながる評価の在り方が、教育課程全体の論点として扱われています。学校種別の詳細は情報活用能力の比較へ。
BY SUBJECT

教科・論点別の比較ページ

6つの共通の変化が、それぞれの教科でどんな形になって現れるかは、各ページで確認できます。

公開済み

教育課程全体

資質・能力の整理、深い学び、柔軟な教育課程、評価など、教科の前に押さえる横断論点。

比較を見る →
公開済み

情報活用能力(小・中・高)

小学校の総合に「情報の領域」、中学校に「情報・技術科」を新設し、高校は情報Ⅰを維持してAI・データサイエンスを充実する案。先行実施の見通しも。

比較を見る →
公開済み

算数・数学(小・中・高)

割合・比・分数の排列見直し、数学ガイダンス、数学Iの新領域、数学A・B・Cの再編案。

比較を見る →
公開済み

国語(小・中・高)

話す・聞く/書く/読むを「話や文章の機能」でつなぎ直す構造変更、語彙・読書・情報の信頼性・古典の学び方、高校選択科目の再編(標準2科目+発展4科目)案。

比較を見る →
公開済み

理科(小・中・高)

4分野(物理・化学・生物・地学)への再編、小学校「理科と日常生活」、中高「科学ガイダンス」、高校「科学と人間生活」4単位版と必履修の3パターン案。

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公開済み

社会・地理歴史・公民(小・中・高)

中学校に地理・歴史・公民をつなぐ分野横断の3単元、高校は地理総合の導入単元や公共の精選、「情報の妥当性の確認」の技能、主権者教育、用語の精選案。

比較を見る →
公開済み

外国語(小・中・高)

AI時代に外国語を学ぶ意義の再定義、国の基盤語彙リストと中学文法の焦点化、高校科目を「英語コミュニケーション(総合)/(発信)」に改称、CEFR B2で必履修免除の案。

比較を見る →
公開済み

総合的な学習・探究の時間、特別活動、生活科

小中の総合を「総合的な探究の時間」に改称、テーマ探究とマイ探究、「情報の領域」の設計、生徒会に学校運営への意見表明、学校行事の代替ルール、生活科の「身体性」の再定義案。

比較を見る →
公開済み

体育・保健体育、芸術、家庭、道徳

「体育理論」を「スポーツ理論」に、態度の指導を知識・技能へ再整理、家庭科を5領域に再編しホームプロジェクトを「個人探究」に、道徳の内容項目の文言見直し。

比較を見る →
STATUS

まだ断定しないこと

教科・科目の名称、具体的な単元、標準授業時数、実施時期は、正式な手続を経て定まります。ここで「検討中」としているものは、審議まとめ(素案)や各ワーキンググループの取りまとめ案に書かれた方向であり、告示された内容ではありません。答申と告示が出た時点で、各ページに「確定」の行を追加します。

WHAT TO DO NOW

いま学んでいる人・教えている人は、何を押さえればよいか

保護者・小中学生

在学中の大半は現行の内容です。6つの変化のうち家庭に関係するのは「AIに代替されない学び」の部分で、体験すること、自分の言葉で説明すること、情報の出どころを確かめることが、どの教科でも土台になります。先取りより、いまの単元の理解を残さないことが有効です。

塾・教室の先生

用語の精選と入試の改善が同時に検討されている点は、指導方針に直結します。暗記量で差をつける指導から、概念の理解と説明できることを重視する指導へ、時間をかけて移す準備が要ります。教科ごとの比較ページで、担当教科の精選の方向を確認してください。

学校の先生

評価の簡素化と教育課程の柔軟化は、告示前でも年間指導計画の見直しの参考になります。調整授業時数制度は小中とも2028年度から先行実施の予定で、情報の領域も同時期です。表形式化された指導要領を読む前提で、単元を「最終的にどんな理解に到達させたいか」から組み直す練習が効きます。

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