「確かな情報」に基づく技能と、「自らの考えを批判的に捉え直す力」を目標に明記
知識・技能では「社会的事象に関する概念」の理解を重視し、技能は小中で「確かな情報に基づき適切かつ効果的に調べまとめる」、高校で「妥当性を吟味しながら調べまとめる」と書き分ける案。思考力・判断力・表現力等には「自らの考えを批判的に捉え直す力」を加えます。
文部科学省の社会・地理歴史・公民ワーキンググループ「取りまとめ(案)」(2026年8月)には、中学校に地理・歴史・公民をつなぐ分野横断の単元を設ける案、高校各科目の導入単元や精選、資料の信頼性を確かめる技能の新設、主権者教育の充実、教科書の用語を減らす方針まで書かれています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。
すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。
ワーキンググループの案に、単元・科目・技能の例まで示されています。まだ決定ではありません。単元名はすべて仮称です。
各学年の指導事項、扱う地域や事例の数、教科書の構成、開始時期は今後の告示・解説で決まります。
社会科だけの時期が決まっているわけではなく、学習指導要領全体のスケジュールに乗ります。文部科学省が示した見通しでは、小学校社会は2030年度、中学校社会は2031年度から全面実施、高校の地理歴史・公民は2032年度の入学生から学年進行で切り替わります。教科書の用語精選の方針は、中学・高校の教科書編集に間に合うよう2027年秋までに示すとされています。
| 学校種 | 改訂(告示)予定 | 周知・先行実施 | 全面実施 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園等 | 2026年度末 | 2027年度 周知 | 2028年度(令和10年度)から全面実施 |
| 小学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施 | 2030年度(令和12年度)から全面実施 |
| 中学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施 | 2031年度(令和13年度)から全面実施 |
| 高等学校 | 2027年度末 | 2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施 | 2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施 |
出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。
個々の単元より先に、目標の書き方と「調べまとめる技能」の中身を変える案が出ています。生成AIとSNSで情報が溢れる中で、社会科が何を鍛える教科なのかを示し直す部分です。
知識・技能では「社会的事象に関する概念」の理解を重視し、技能は小中で「確かな情報に基づき適切かつ効果的に調べまとめる」、高校で「妥当性を吟味しながら調べまとめる」と書き分ける案。思考力・判断力・表現力等には「自らの考えを批判的に捉え直す力」を加えます。
資料の表題・出典・年代・作成者を確かめて集める、資料の価値や限界を読み取る、まとめた情報の典拠と引用を明示して妥当性を確認する、という一連の技能を新たに位置付ける案です。
強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。
市区町村→都道府県→国→世界と広げる同心円の構成は続けつつ、グローバル化など地域社会の変化を内容に取り込み、重複する内容を減らして「余白」を生む案です。
入口の「社会へのまなざし」、地理・歴史から公民へ橋を架ける「私たちと社会」、まとめの「よりよい社会を目指して」の3単元を設け、地域調査をその中に位置付ける案です。既存の内容を移して統合するので総量は増やしません。
科目構成(地理総合・歴史総合・公共が必履修、探究科目などが選択)は維持。地理総合の大項目Aを導入単元「地理と私たち」に見直し、地理探究のB(2)を「現代世界の地誌的考察と課題の研究」に再編。歴史の探究科目では生徒が問いを表現し学習に生かすことを明記し、日本史探究の近現代は上位概念に統合して用語を減らす案です。
「公共」のB・Cで扱う現実社会の事柄や課題を13から10に精選し、主題を設定しやすくする案。「職業選択」と「雇用と労働問題」は一つにまとめます。主権者教育は模擬選挙・模擬議会・模擬請願などの実践と、選挙管理委員会や議会事務局・NPOとの連携で充実させます。
取りまとめ案の補足資料にある中学校の改善イメージです。3分野はそのまま残り、それをつなぐ単元が加わる形です。
| 位置 | 単元(仮称) | 役割と、単元の問いの例 | 現行からの移行・統合 |
|---|---|---|---|
| 入口(1年) | 分野横断A「社会へのまなざし」 | 小学校社会科を踏まえた導入単元。3年間の見通しと、地理・歴史の学習への動機付け。問いの例「私たちの暮らす社会を理解し、社会と自分との関わりを考えるには、どのように学び方を工夫できるか」 | 各分野の既存の内容を統合・整理して設ける |
| 地理・歴史 | 地理的分野/歴史的分野 | 現行どおり。日本の諸地域は考察する地域数を減らし、歴史は政治・文化を一体で時代の特色を大観する構成に | 地域調査は分野横断Bへ |
| 橋渡し | 分野横断B「私たちと社会」 | 地理・歴史から公民への接続単元。身近な地域から課題を見いだし、地域調査を地理・歴史両面から行う。問いの例「多様な地域や環境、様々な歴史の中で、私たちは社会の一員としてどのように関わることができるか」 | 地理・歴史それぞれの地域を題材とした学習を統合 |
| 公民 | 公民的分野 | 現行どおり。情報化の影響は「情報・技術科」と役割分担し、社会の変化や課題の考察に重点化 | 一部を情報・技術科へ |
| まとめ(3年) | 分野横断C「よりよい社会を目指して」 | 解決すべき課題を考察・構想し、妥当性や実現可能性を踏まえて表現するまとめ単元。問いの例「社会に参画する主体として、よりよい社会を築くにはどうすればよいか」 | 現行の公民的分野D(2)を位置付け直す |
出典:社会・地理歴史・公民ワーキンググループ取りまとめ(案)補足イメージ9「中学校社会科における改善イメージ」、補足イメージ10「小・中学校社会科における内容の枠組みと対象」。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。
取りまとめ案は、総量を増やさない前提で、次の視点から内容を見直す(すでにある項目の扱いの見直しを含む)としています。個別の単元名や記述は示されていません。
政治的・経済的な力関係の変化や地域紛争を我が国との関係で多面的に捉える視点、自然災害・海洋を含む環境、デジタル技術が社会にもたらす意義と影響、国際協力の在り方。
グローバル化に伴う地域社会の変化、食と農林漁業・食料の価格形成、社会制度教育、金融経済の仕組み、自衛隊の意義・役割、領土に関する教育、経済安全保障、拉致問題。
アイヌ施策推進法、こども基本法、障害者差別解消法、理解増進法を踏まえた人権の内容、旧優生保護法やハンセン病の歴史と被害の実態に基づく人権教育(他教科と連携)。
出典:同 4.(3)内容の充実。資料は「①と②は整理上の分類で重複する部分もある」「教師の指導力向上が必要」と付記しています。
社会科の変化は教室の中だけで完結しません。教科書の厚さ、入試の出し方、地域の人や施設との関わり方が同時に検討されています。
2026年8月に掲載された社会・地理歴史・公民ワーキンググループの取りまとめ(案)には、上記のように単元の新設、精選の例、技能の新設、科目ごとの見直しが明記されています。一方、資料自体に「告示までに文部科学省で引き続き検討」「今後検討する必要がある」とあるため、学年別の内容・扱う地域や事例の数・教科書の構成を断定することはできません。
在学中の大半は現行の内容です。次期案が重視する「資料の出どころと年代を確かめる」「複数の資料を見比べる」習慣は、調べ学習や自由研究で今から身に付けられます。用語の暗記より「なぜそうなったか」を説明できることが土台です。
地理・歴史・公民をつなぐ問いが中学校の軸になる方向です。単元を教えるときに「この地域の課題は歴史のどこから来て、どんな制度と関わるか」を一言添えておくと、改訂後の分野横断単元に対応しやすくなります。用語を減らす方針は、入試対策の作り方にも影響します。
いま在学中の人は現行の科目構成のまま卒業します。地理総合の導入単元や公共の精選は2032年度以降の入学生からです。探究科目で「自分の問い」を立てて資料の妥当性を確かめる学び方は、大学入試の記述・論述にも直結する方向です。
確定しているのは現行学習指導要領です。学校種ごとの入口はこちらから。