SCIENCE: WHAT MAY CHANGE

理科で、
何が変わり得るのか。

文部科学省の理科ワーキンググループ「取りまとめ(案)」(2026年8月)には、学習内容を物理・化学・生物・地学の4分野で小・中・高そろえて整理する骨組みの変更、小学校の「理科と日常生活」、中・高の「科学ガイダンス」、高校の必履修科目の組合せまで書かれています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。

HOW TO READ

色の意味

現行・継続

すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。

取りまとめ案で具体化

ワーキンググループの案に、分野・科目・学習内容の例まで示されています。まだ決定ではありません。

未確定

各学年の単元、単位数、開始時期、設備や教員配置の整備は今後の専門的検討・正式手続で決まります。

WHEN

いつから変わるのか

理科だけの時期が決まっているわけではなく、学習指導要領全体のスケジュールに乗ります。文部科学省が示した見通しでは、小学校理科は2030年度、中学校理科は2031年度から全面実施、高校理科は2032年度の入学生から学年進行で切り替わります。理科の取りまとめ案に、教科独自の先行実施の記述はありません。

学校種改訂(告示)予定周知・先行実施全面実施
幼稚園等2026年度末2027年度 周知2028年度(令和10年度)から全面実施
小学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施2030年度(令和12年度)から全面実施
中学校2026年度末2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施2031年度(令和13年度)から全面実施
高等学校2027年度末2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施

出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。

FRAMEWORK

骨組みが変わり得ること(小・中・高に共通)

単元より先に、理科という教科の区切り方と目標を小・中・高でそろえる案が出ています。教科書の章立てや「第1分野・第2分野」という呼び方に関わる部分です。

「2分野4領域」から「物理・化学・生物・地学の4分野」へ

変わり得ること

小学校の4領域(エネルギー・粒子・生命・地球)と中学校の第1分野・第2分野を、小・中・高共通の4分野(物理・化学・生物・地学)に再編し、各分野をさらに3つ程度の区分に分けて整理する案です。

現行
小学校は「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」の4領域、中学校は第1分野(物理・化学)と第2分野(生物・地学)、高校は科目ごとに区分が異なり、学校種をまたぐと区分や用語(探究の過程の呼び方など)が揃っていないと指摘されています。
取りまとめ案
小学校から高校まで4分野で整理し、区分ごと・学校種ごとに「統合的な理解」(例:生物分野「生命の連続性」で、植物と動物の成長を通して生命の連続性を理解する)と「総合的な発揮」(観察や実験を通して特徴を見いだして表現できる)を表形式で示します。従来の4領域の中核概念は「高次の資質・能力」の側で表現。小学校の内容が難しくなるものではないと国が丁寧に周知するとしています。
未確定
各区分の具体的な記述と、どの単元がどの区分に入るかは「文部科学省で行政的に検討」とされています。

目標と「見方・考え方」を小・中・高で統一。対象を「自然や社会の事象・言説」に広げる

変わり得ること

「自然の事物・現象を科学的に探究する」という目標の柱は維持しつつ文言を統一。見方・考え方の対象を身近な自然から「自然や社会の事象・言説」に広げ、「自然科学的な視点」で「客観的、論理的、批判的に考察する」と規定する案です。

現行
小学校は「自然に親しみ」「自然を愛する心情」、中・高は「科学的に探究しようとする態度」と学校種で文言が異なります。見方・考え方は「(身近な)自然の事物・現象を科学的な視点で捉え、比較したり関係付けたりして考える」です。
取りまとめ案
生成AIの発展と非科学的なデマの拡散を背景に、メディアリテラシーと批判的思考を見方・考え方に組み込みます。「学びに向かう力・人間性等」は小学校で重視してきた自然・生命への情意をもとに「生命を尊重する心情や人と自然環境の調和に寄与しようとする心情」として小・中・高共通に規定する案です。
未確定
最終的な文言は告示で確定します。
SPECIFIC CHANGES IN THE DRAFT

変わり得ることを、学校種ごとに具体的に

強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。

小学校|分野をまたぐ「理科と日常生活」を新設、重複する内容は精選

変わり得ること

エネルギー問題や環境問題のように一つの分野に収まらない課題を、既習事項をもとに学ぶ内容「理科と日常生活」を小学校に新設する案です。あわせて、同じ概念のために並んでいる内容は精選します。

現行
小学校理科は3〜6年で、4領域ごとの単元(風とゴムの力の働き、物の溶け方、植物の発芽・成長・結実、天気の変化など)を学びます。分野横断的な学習内容は規定されていません。
取りまとめ案
「理科と日常生活」を新設。社会・職業との関係に特化した独立の内容は設けず、各単元の指導を充実させます。精選の検討例として、3年「風とゴムの力の働き」を「風の力の働き」または「ゴムの力の働き」のどちらか1つに見直す案(3年で学ぶ「磁石の力」と合わせて「力」の統合的な理解を図る。指導でもう一方を扱うことは妨げない)が示されています。
未確定
「理科と日常生活」をどの学年に置くか、どの単元がどう精選されるかは未公表です。

中学校|「科学ガイダンス」を新設、探究の過程を教育課程全体に位置付け

変わり得ること

科学とは何か、理科の全体像、研究倫理、検証の方法、理科と研究・社会とのつながりを学ぶ「科学ガイダンス」を中学校に新設する案です。総授業時数は増やさないことが前提です。

現行
第1分野(身近な物理現象、電流とその利用、運動とエネルギー、身の回りの物質、化学変化と原子・分子、化学変化とイオン)と第2分野(いろいろな生物とその共通点、生物の体のつくりと働き、生命の連続性、大地の成り立ちと変化、気象とその変化、地球と宇宙)に、分野横断の「科学技術と人間」があります。
取りまとめ案
「科学ガイダンス」の要素は、科学と似非科学・デマの見分け方、科学は仮説を検証し続ける営みで「絶対に正しい/間違っている」と二分できないこと、捏造・改ざん・盗用などの研究倫理、観察・実験・シミュレーション・調査という検証の方法、地震波と緊急地震速報やiPS細胞のような理科と社会・研究のつながり。知識の暗記を求める指導につながらないようにし、関連する内容は各単元でも往還的に扱います。学年・学校段階が上がるほど理科への興味が下がる現状への対応です。
未確定
ガイダンスの時間数、配置する学年、教材は確定していません。小・中・高の内容の接続で見直す点も今後点検するとされています。

高校|科目構成は維持、「科学と人間生活」を見直して4単位版を新設、必履修は3パターンに

変わり得ること

「○○基礎」(2単位・選択必履修)→「○○」(4単位・選択)という枠組みは維持。分野横断の「科学と人間生活」は内容を見直したうえで、現行の2単位に加えて4単位版を新設し、それ1科目で必履修を満たせる組合せを追加する案です。

現行
必履修の組合せは「科学と人間生活(2単位)+○○基礎1科目(2単位)」か「○○基礎3科目(6単位)」の2通り。「科学と人間生活」は光や熱・物質・生命・宇宙や地球の4項目で、それぞれ2つのうち1つを履修します。科目によって開設・履修状況に偏りがあると指摘されています。
取りまとめ案
「科学と人間生活」を中学校理科との接続を意識して4分野をより広くカバーする内容に見直し、各分野の2項目を両方履修できる4単位版を新設(現行どおり1つずつ履修する2単位版も残す)。必履修は「科学と人間生活(4)」1科目、「科学と人間生活(2)+○○基礎1科目」、「○○基礎3科目」の3パターン。「科学ガイダンス」は各基礎科目に位置付け、最初に学ぶ基礎科目の冒頭でまとめて扱います。柔軟な組み替えの例として「物理基礎+物理」を現行6単位から5〜6単位、「基礎4科目」を8単位から6〜8単位にする開設も挙げられています。
未確定
「科学と人間生活」の新しい内容の中身、各科目の単元の精選、大学入試との関係は決まっていません。
MAPPING

現行の領域・分野は、4分野のどこに入るのか

取りまとめ案の補足資料にある再編のイメージです。単元名は現行のもので、取りまとめ案は「学校種共通の4分野に整理する」方向を示しているにとどまります。

4分野(案)小学校の現行領域と主な単元中学校の現行分野と主な単元高校の現行科目
物理分野エネルギー:風とゴムの力、光と音、磁石、電気の通り道、振り子、てこ、電気の利用 など第1分野:身近な物理現象、電流とその利用、運動とエネルギー物理基礎 → 物理
化学分野粒子:物と重さ、空気と水の性質、物の溶け方、燃焼の仕組み、水溶液の性質 など第1分野:身の回りの物質、化学変化と原子・分子、化学変化とイオン化学基礎 → 化学
生物分野生命:身の回りの生物、季節と生物、植物の発芽・成長・結実、人の体のつくりと働き、生物と環境 など第2分野:いろいろな生物とその共通点、生物の体のつくりと働き、生命の連続性生物基礎 → 生物
地学分野地球:太陽と地面、雨水の行方、天気、月と星、流れる水の働き、土地のつくりと変化 など第2分野:大地の成り立ちと変化、気象とその変化、地球と宇宙地学基礎 → 地学
分野横断「理科と日常生活」を新設(案)科学技術と人間(現行)+「科学ガイダンス」を新設(案)科学と人間生活(2単位/4単位版を新設)+各基礎科目の「科学ガイダンス」(案)

出典:理科ワーキンググループ取りまとめ(案)補足イメージ③「理科の分野・領域の再編について」、⑥「高等学校・理科の科目構成」、⑦「科学と人間生活の内容構成」。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。

REQUIRED SUBJECTS (DRAFT)

高校の必履修の組合せ(案)

すべての高校生が履修する理科の組合せに、1科目で満たせる選択肢が加わる案です。生徒の多様なニーズに応じて各学校が柔軟にカリキュラムを組めるようにする狙いです。

新設|「科学と人間生活」1科目

科学と人間生活(4単位)

物理・化学・生物・地学の各分野で2項目を両方履修。中学校理科との接続を意識し、生活や社会と結びついた身近な内容にする案。

現行どおり|「科学と人間生活」+基礎1科目

科学と人間生活(2単位)○○基礎(2単位)

各分野2項目のうち1つを履修する2単位版に、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎から1科目を組み合わせます。

現行どおり|基礎3科目

○○基礎○○基礎○○基礎

4つの基礎科目から3科目(6単位)。理系進学を見据えるコースで多い組合せです。「○○」は対応する基礎を履修した後に履修します。

出典:同 補足イメージ⑦「必履修科目の組合せ」。単位数の細分化や科目の組み替えを認める総則側の検討とあわせて、学校ごとの開設の幅が広がる方向です。

LEARNING SUPPORT

観察・実験と学びの環境も論点になっている

理科は「理科が楽しい」と答える児童生徒が学年とともに減る教科です。内容だけでなく、実験の環境や指導の仕組みも検討されています。

観察・実験の設備と、探究の「度合い」

検討中
器具・機器の整備に地域差・学校差があるとして、国が実態を調査・可視化し計画的に整備する方針。特に実験計測用センサーはデータ取得を効率化して分析・考察に時間を回せるため整備が期待されています。探究的な学びは基礎・基本の定着を前提にした好循環であり、毎単元・毎時間に求めるものではないと国が丁寧に説明するとしています。

学び直しと余白

検討中
理科は再実験などで授業時間を臨機応変に組み替える必要がある教科として「授業時間に余白を生み出すこと」を重視。学年間・学校種間の重複が大きい部分を整理し、教科書には「必ず扱う」「必要に応じて扱う」の濃淡を付けることが検討されています。義務教育の調整授業時数制度で生まれる時間を、発展的な実験・観察や個人探究に使う例も挙げられています。
未確定
具体的にどの内容を整理するかは示されていません。高校入試の改善も併せて必要と資料は述べています。

理系進路の男女差と、才能の伸長

検討中
理科の成績に男女差はないのに理科への自信や科学分野を志す割合に差があるとして、アンコンシャスバイアスの解消や女子中高生の理系進路選択支援を政府一丸で進めるとしています。意欲の高い生徒には大学との連携、SSHの好事例、飛び入学の周知が挙げられています。
STATUS

「方向性だけ」の段階ではない。ただし確定でもない。

2026年8月に掲載された理科ワーキンググループの取りまとめ(案)には、上記のように分野の再編、新設する学習内容、高校の科目構成の案が明記されています。一方、資料自体に「文部科学省で行政的に検討」「解説において丁寧に説明」とあるため、学年別の全単元・時数・具体的な内容を断定することはできません。同時に、高等学校の共通教科「理数科」の取りまとめ(案)も公開されています。

WHAT TO DO NOW

いま学んでいる人・教えている人は、何を押さえればよいか

保護者・小中学生

在学中の大半は現行の内容です。4分野への再編は区切り方の話で、小学校の内容が難しくなるものではないと資料は明記しています。観察・実験で「なぜそうなるか」を言葉にする習慣は、方向が変わっても土台のままです。

塾・教室の先生

小・中・高を4分野で貫く見方になるので、単元を教えるときに「これは物理・化学・生物・地学のどれで、前後の学年とどうつながるか」を添えると、改訂後の教材にも移しやすくなります。中学の「科学ガイダンス」に相当する導入(科学とは何か、デマの見分け方)は今から扱えます。

高校生

いま在学中の人は現行の科目構成のまま卒業します。「科学と人間生活」4単位版や必履修3パターンは2032年度以降の入学生からです。文系でも4分野に触れる選択肢が増える方向は、科目選択の参考になります。

CURRENT LEARNING

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確定しているのは現行学習指導要領です。学校種ごとの入口はこちらから。

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