「AIに代替されない、身体を通した学び」として意義を定義し直す
体育は「身体を使いこなして能動的に人生を舵取りする力」、芸術は「感性と知性の両輪を働かせ、心が動く体験から意味や価値を見いだす」、家庭科は「実践的・体験的な活動を通した問題解決」、道徳は「AI時代の自らの人生の舵取り」として、それぞれ本質的な意義を書き直す案です。
身体や手を動かして学ぶ教科と、心の在り方を扱う道徳。AIが広がる時代にこそ価値が見直されている4つの教科・領域です。文部科学省の各ワーキンググループの「取りまとめ(案)」(2026年8月〜9月)には、「体育理論」の名称変更、態度に関する指導の組み直し、家庭科の領域再編、道徳の内容項目の文言見直しまで書かれています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。
すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。
ワーキンググループの案に、名称・領域・指導の例まで示されています。まだ決定ではありません。名称はすべて仮称です。
各学年の指導事項、時数、教科書の構成、開始時期は今後の告示・解説で決まります。
学習指導要領全体のスケジュールに乗ります。小学校は2030年度、中学校は2031年度から全面実施、高校は2032年度の入学生から学年進行です。中学校の技術・家庭科は、技術分野が「情報・技術科」として独立するため、家庭科は単独の教科として新たな目標を検討する必要があると資料は述べています。
| 学校種 | 改訂(告示)予定 | 周知・先行実施 | 全面実施 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園等 | 2026年度末 | 2027年度 周知 | 2028年度(令和10年度)から全面実施 |
| 小学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施 | 2030年度(令和12年度)から全面実施 |
| 中学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施 | 2031年度(令和13年度)から全面実施 |
| 高等学校 | 2027年度末 | 2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施 | 2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施 |
出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。
身体を使う・手を動かす・心を見つめるという、AIに置き換えにくい学びの価値を言い直したうえで、「態度」や「作品」だけを見る評価から、過程を見る評価へ移そうとする点が共通しています。
体育は「身体を使いこなして能動的に人生を舵取りする力」、芸術は「感性と知性の両輪を働かせ、心が動く体験から意味や価値を見いだす」、家庭科は「実践的・体験的な活動を通した問題解決」、道徳は「AI時代の自らの人生の舵取り」として、それぞれ本質的な意義を書き直す案です。
短い題材ごとに3観点すべてを記録に残そうとして総括的評価に偏る実態を踏まえ、複数の題材や単元でまとめて総括的評価を行うことも可能とし、形成的評価を重視する案です。
強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。
中学・高校の「体育理論」を「スポーツ理論」に改称する案。公正・協力・責任・参画・共生・健康安全といった態度に関する指導事項を、「学びに向かう力・人間性等」から「運動との関わり方」として知識・技能を中心に置き直します。
知識の集積ではなく、健康に関する「概念」(どんな要素が関連してその事象が起きるか)と「それに関わる原則」(どう働きかければ望ましい結果になるか)を習得し、未知の健康課題にも対応できる力を育てる案です。
発想・構想する段階を思考力・判断力・表現力等、材料や用具を使って表す段階を技能と分けている現行を見直し、工夫して表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として一体的に示す案です。
内容を「家族・家庭と生涯発達」「生活の経営と消費生活」「食生活」「衣生活」「住生活」の5領域(高校「家庭総合」は「総合生活実践」を加えた6領域)に再編する案。高校の「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」は独立した領域をやめ、各領域の中に「生活の課題と実践」として位置付け、「個人探究」「協働探究」と呼び替えます。
家族関係や友人関係の実態に馴染まない部分があるとして、内容項目の文言を見直す案です。「父母、祖父母」を「父母、祖父母等の家族」に、「心から信頼できる友達をもち」を「友達と互いに信頼し合い」にするなどが例示されています。
4教科で示されている、呼び方や区分の変更案をまとめました。いずれも仮称で、告示で変わる可能性があります。
| 教科 | 現行 | 取りまとめ案 |
|---|---|---|
| 保健体育 | 体育理論(中・高の領域) | スポーツ理論。運動やスポーツの多様な楽しみ方、文化・経済・教育面からの理解、安全な行い方 |
| 保健体育 | 公正・協力・責任・参画・共生・健康安全(学びに向かう力・人間性等) | 「運動との関わり方」として知識・技能を中心に再整理。「愛好的な態度」は「運動やスポーツの多様な楽しみ方を目指す態度」へ |
| 保健体育 | 高校専門学科「体育」 | 「スポーツ」に改称 |
| 音楽(小) | 歌唱/器楽/音楽づくり | 「歌唱・器楽」/「音楽づくり」の2区分に整理 |
| 家庭科 | A家族・家庭生活/B衣食住の生活/C消費生活・環境 | A家族・家庭と生涯発達/B生活の経営と消費生活/C食生活/D衣生活/E住生活(家庭総合はF総合生活実践を追加) |
| 家庭科(高) | ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動(独立した領域) | 各領域の中の「生活の課題と実践」へ。「個人探究(ホームプロジェクト)」「協働探究(学校家庭クラブ活動)」と呼び替え、家庭基礎・家庭総合の双方で実施 |
| 道徳 | [家族愛、家庭生活の充実]「父母、祖父母を敬愛し」 | 「父母、祖父母等の家族」など、家族関係の実態を踏まえた表現へ |
| 道徳 | [友情、信頼]「心から信頼できる友達をもち」 | 「友達と互いに信頼し合い」など、友人関係の実態を踏まえた表現へ |
出典:体育・保健体育、健康、安全WG/芸術WG/家庭WG/道徳WG 各取りまとめ(案)。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。
実技教科は、教える人と場所がそろわないと成り立ちません。取りまとめ案は条件整備も具体的に扱っています。
2026年8月から9月に掲載された各取りまとめ(案)には、上記のように名称の変更、領域の再編、指導と評価の組み直しの案が明記されています。一方、いずれも「告示に当たってはWGでのイメージをもとに更に検討すべき」とされており、各学年の指導事項や教科書の構成を断定することはできません。
在学中の大半は現行の内容です。次期案はどの教科も「できた・できない」より「どう関わるか」を見る方向に動いています。運動が得意でなくても楽しみ方は複数ある、作品の出来より作る過程が見られる、という考え方は家庭での声かけにも使えます。
これらの教科は塾で扱う機会が少ない領域ですが、家庭科の消費者教育・金融経済教育(キャッシュレス、家計管理、社会保障や奨学金)は進路指導と接点があります。道徳の「考え、議論する」型は、他教科の対話型授業の組み立ての参考になります。
体育の態度に関する指導の位置付けの変更と、芸術・家庭科の評価の簡素化は、告示前でも年間指導計画の見直しの参考になります。水泳授業やプール管理、空調整備は設置者との調整が要る話なので、早めに情報を共有しておく価値があります。