AI時代に外国語を学ぶ意義を再定義し、見方・考え方を書き直す
手軽に高精度の翻訳ができる社会を前提に、「AIに代替されるべきではない、人間が大切にすべき力」として意義を整理し直す案です。
文部科学省の外国語ワーキンググループ「取りまとめ(案)」(2026年8月)は、「AIで翻訳できる時代に、なぜ外国語を学ぶのか」の再定義から始まります。国が作る基盤語彙リスト、中学校の文法の焦点化、小中高の接続、高校科目の名称と内容の見直し、外部試験による必履修免除の水準まで書かれています。ただし、まだ正式な学習指導要領ではありません。いつから、何が、どこまで決まっているかを、確度を色で分けて読みます。
すでに現行学習指導要領にあり、次期案でも維持・充実が示される内容です。
ワーキンググループの案に、科目名・活動・語彙の扱いまで示されています。まだ決定ではありません。科目名や活動名はすべて仮称です。
基盤語彙リストの中身、学年ごとの指導事項の目安、単位数の詳細、開始時期は今後の告示・解説で決まります。
外国語だけの時期が決まっているわけではなく、学習指導要領全体のスケジュールに乗ります。文部科学省が示した見通しでは、小学校は2030年度、中学校は2031年度から全面実施、高校は2032年度の入学生から学年進行で切り替わります。外国語の取りまとめ案に、教科独自の先行実施の記述はありません。
| 学校種 | 改訂(告示)予定 | 周知・先行実施 | 全面実施 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園等 | 2026年度末 | 2027年度 周知 | 2028年度(令和10年度)から全面実施 |
| 小学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2029年度 先行実施 | 2030年度(令和12年度)から全面実施 |
| 中学校 | 2026年度末 | 2027年度 周知 → 2028〜2030年度 先行実施 | 2031年度(令和13年度)から全面実施 |
| 高等学校 | 2027年度末 | 2028年度 周知 → 2029〜2031年度 先行実施 | 2032年度(令和14年度)入学生から学年進行、2034年度(令和16年度)全面実施 |
出典:文部科学省 総則・評価特別部会(2026年7月8日)参考資料3「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」。資料に「今後変更の可能性がありうる」と明記されています。先行実施の具体的な時期・内容は随時検討、特別支援学校は対応する学校種と同様の想定です。
単元より先に、「なぜ学ぶか」「何を目標に書くか」「言語活動をどう呼ぶか」を組み直す案が出ています。教科書の作り方と評価のやり方に直結する部分です。
手軽に高精度の翻訳ができる社会を前提に、「AIに代替されるべきではない、人間が大切にすべき力」として意義を整理し直す案です。
学習過程を「コミュニケーション活動」(主に思考力・判断力・表現力等を育てる)と「コミュニケーション活動を支える活動」(主に知識・技能を育てる)に分けて目標の柱書に位置付け、5領域別に書かれていた目標の要素を「内容」に移して学年段階の目安とともに示す案です。
強調表示した行が、取りまとめ案に明記された「変化の案」です。淡い表示の行は、まだサイトが断定してはいけない部分です。
3・4年の外国語活動(音声中心)から5・6年の外国語科(読む・書くを加える)、そして中学校へ、話題と活動を段階的に高度化して「○学年相当」の目安で示し、接続のために重点を置く事項を明記する案です。
前回改訂で増えた語彙・文法・話題が「過度に高度化」したとして、国が複数のコーパスから基盤語彙リストを作って教科書に推奨し、指導する語彙数を精選も含めて見直す。文法事項は使用頻度の高いものを本文に明示して焦点化し、話題は「身近な社会的な話題」に改める案です。
5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」は(総合)に、発信力を高める「論理・表現」は(発信)に名称を改め、趣旨に沿った内容にする案です。「論理・表現」が文法解説と問題演習中心になりがちで科目の趣旨どおりに指導されていない実態への対応です。
外国語はCEFRと対応した外部試験が複数あることから、必履修科目の免除と振替の制度運用を始める案です。免除に必要な英語力は、現行の高校科目がA2〜B1相当を念頭に置いていることを踏まえ、それを大きく上回るB2相当以上とします。
取りまとめ案の補足資料にある科目の変遷と方向性です。科目の趣旨は維持し、名称で趣旨を明示して内容を強化する形です。
| 区分 | 現行の科目 | 取りまとめ案の科目(すべて仮称) |
|---|---|---|
| 必履修 | 英語コミュニケーションⅠ(3単位) | 英語コミュニケーション(総合)Ⅰ(6新単位)。5領域を総合的に扱い、領域統合を一層強化。中学校の内容の習熟を図る |
| 選択 | 英語コミュニケーションⅡ・Ⅲ(各4単位) | 英語コミュニケーション(総合)Ⅱ・Ⅲ(各8新単位) |
| 選択 | 論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(各2単位) | 英語コミュニケーション(発信)Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(各4新単位)。「論理・表現」の趣旨を維持しつつ発信力を一層強化。日常的な会話、論理の構成や展開を充実 |
| 免除・振替 | なし | CEFR B2相当以上の外部試験で必履修科目を免除し、学校設定科目や上位科目、学校外学修に振替 |
出典:外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)補足イメージ⑰「高校の外国語科目の改善イメージ」、⑱「外国語科目の変遷と改訂の方向性」。「新単位」は総則側で検討されている単位の細分化(倍加)を前提とした表記です。取りまとめ案 の段階で、告示で変わる可能性があります。
取りまとめ案は、英語運用能力をめぐる社会全体の課題を5つに分け、学校で対応できる方向を示しています。授業時間の限界を認めたうえでの整理です。
英語話者が日本語を専門的に使えるようになるには2,200時間とされる中、学校の授業だけでは足りない。AIを含むデジタル学習基盤と家庭学習の連携で、授業内外の学びの量と質を増やす。
最頻出3,000語が一般的な文章の約95%を占めるとされる。難易度と頻度を勘案した基盤語彙リストを国が作り、教科書に推奨する。
高3の6割が「英語力を高める学習方法が分からない」。第二言語習得・認知心理学・学習科学の知見に基づく学習方略を、動画や資料で教師と学習者に提供する。
学校で学んだことを学校外で使う機会がほとんどない環境が言語習得に不利だという共通認識が必要。英語キャンプ、海外校との交流、留学、ALTの拡充に加え、AIで恥ずかしがらずに話す練習量を大幅に増やす。
「英語が話せない」原因が、母語で自分の意見が言語化されていない場合もある。自分が本当に伝えたいこと、自分の国や地域のことを話題の中心に置き、教育課程全体で根拠に基づいて意見を説明する活動を強化する。
出典:同 補足イメージ②「英語運用能力に関する社会全体の課題と学校教育における対応の方向」。数値は資料の引用で、資料は日本がEFL(非英語圏で学ぶ外国語としての英語)環境であることを前提にしています。
外国語は、AIの影響を最も直接に受ける教科の一つです。取りまとめ案はAIを避けるのではなく、学習指導要領に明記して位置付ける方向です。
2026年8月に掲載された外国語ワーキンググループの取りまとめ(案)には、上記のように目標の構造、語彙・文法の扱い、高校科目の名称と内容、免除の水準が明記されています。一方、資料自体に「告示や解説を示すにあたり引き続き検討」とあり、基盤語彙リストの中身や学年ごとの目安、単位数の現行換算を断定することはできません。
在学中の大半は現行の内容です。次期案は語彙と文法を「減らして繰り返す」方向で、音声と綴りの結び付きや語順への気付きを土台として重視しています。単語の暗記量より、聞いて分かる・声に出せる語を増やすことが、方向が変わっても効きます。
「身近な社会的な話題」「自分の意見と地域のこと」が中心になる方向です。教材の題材を生徒の生活圏に寄せ、読んだ・聞いたことをもとに話す・書く領域統合の活動を増やしておくと、改訂後の(総合)(発信)の趣旨に合います。AIで発話量を増やす練習も今から取り入れられます。
いま在学中の人は現行の科目構成のまま卒業します。科目名の変更と外部試験による免除は2032年度以降の入学生からです。CEFR B2相当が「大きく上回る水準」の基準として挙がっている点は、目標設定の参考になります。
確定しているのは現行学習指導要領です。学校種ごとの入口はこちらから。